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戦争と平和を読む – まとめ

戦争と平和

2025年4月29日

「白鯨」を読むつもりだったけど、やっぱり気が変わり、トルストイの「戦争と平和」を読んでいます。新潮文庫の工藤精一郎訳、全4巻の大長編。めちゃくちゃ面白い!

タイトルが重々しいから、きっと暗くて気難しい小説だろうと身構えていたら、ぜんぜん違いました。ユーモアに溢れた軽快な文章ですらすら読めています。もしかしたら、これから暗くなっていくのかもしれないけど、今のところはまだ「平和」の状態で、ロシアのお金持ちたちが行儀よく、心にもない世辞を言い合って、ウワサ話で盛り上がっています。お金持ちなんて、なるもんじゃないな。


2025年5月9日

カバンの内側に、ちょうど文庫本がすっぽりと入るポケットが付いていて、出かける時は必ずそこへ1冊本を入れていきます。今は「戦争と平和」です。帆布生地にこすれて、本の背表紙がダメージを受けます。なぜか「戦争と平和」は、これまでの本に比べて、背表紙のかすれスピードが格段に速く、買ってからまだ1ヵ月も経っていないのに、タイトル文字が消えかかっています。妻に「これ中古で買ったん?」と言われてしまいました。否、セルフビンテージです。ぼくは自分で本を読み込んでボロボロにするのが好きなタイプだけど、それにしてもこの剥がれ具合はちょっとひどい。なんでやろ?

舞台は社交界から、一気に戦場へと変わっています。バグラチオン公爵のカッコよさ!ぼくがじーんときたのは、激しい砲火の中でひるむことなく戦い続けた口下手な哲学者トゥーシン大尉と、アンドレイ公爵が、「お元気で」と、言葉を交わすシーンです。


2025年6月4日

現在2巻目に突入しています。第1章の終わりに、ロストフがドーロホフに挑発されて賭博に手を出してしまい、どんどん負け額が膨らんでいくシーンは、読んでいて苦しくなりました。あー、賭博なんかしないでまっすぐ家に帰っていれば、今頃どんなに楽しかったか!と後悔するロストフの心を思うと、非常にツラいものがありました。

ぼくはギャンブルで大金を失った経験は無いけど、サーバートラブルが発生した時なんかは、心臓がドキンと音を立てて、うわー、サーバートラブルが発生する前の自分に戻りたい!ひーひー言って目の前の仕事に追われていたけど、あんなの大したことなかったのだ、むしろ平穏で幸せだったのだ、と思ったことはあります。

心臓がドキンとするようなトラブルが無いのなら、それだけで十分幸せな状態だということを、ロストフの賭博シーンを読んで思い出しました。


2025年6月28日

2巻を読了しました。1巻も面白かったけど、2巻も面白かった!こんなに面白いものが、何か月にもわたって楽しめるものが、1冊たったの1,000円で買えるなんて最高です、100円を5秒で飲み込んでしまうクレーンゲームに比べたら!いや、クレーンゲームにはクレーンゲームの良さがありますね。

サマセット・モームが「戦争と平和はあらゆる小説の中でもっとも偉大な作品だ」と言っていました。モームと戦争と平和について朝まで語りたい。でもそれは叶わないから、ChatGPTと語っています。ChatGPTは肯定しかしないから、少し物足りません。TOKIOの国分さん騒動をうけて、松岡さんが「人生はこういうことがあるのか」と言っていたけど、160年前にロシア人の文豪が書いた作品を読んでいても「人生はこういうことがあるのか」と思います。しみじみ。


2025年8月6日

いま3巻の途中です。失速中。どうして失速しているのかというと、ナポレオンとの戦争が詳細に描かれていて、ちょっと退屈だから。モームは「読書案内」の中で、退屈なシーンは飛ばしていいよ、飛ばして読んでもその作品の偉大さが損なわれることはないから、と言っているけど、性分的にそれが出来ない。だから失速しています。マリア嬢に幸福の兆しが見えたのは良かった。


2025年9月24日

3巻を読み終えました。3巻は戦争のシーンが多く、個人よりも集団(国家)にフォーカスされていて、途中すこし退屈しました。しかし、終盤にとっておきのシーンが用意されていた!アンドレイ公爵とナターシャの再会。感動的な語句を一切使わず、たった一行で終わらせるトルストイの凄さ。次はついに最終巻です。


2025年10月1日

主要人物であるアンドレイ公爵の死に方は印象的で、まるでトルストイ自身が一度死を経験したことがあるような描き方だった。おそるべし、トルストイ。死は生からの目覚めである、という言葉が強烈に心にくいこんできました。終わりではなく、ただの意識の移行だとしたら、死はそんなに怖いものではないですね。

「魔の山」の雪の章(多くの人が作品のハイライトに挙げる有名な章)を読んだときにも感じたけど、どうしてトーマス・マンやトルストイが「そのこと」を知っていて、書くことができたのか、不思議で仕方ありません。ChatGPTにそのギモンをぶつけると、それが文学の神秘なのです、とカッコいい答えが返ってきました。


2025年10月2日

大江健三郎さんの『新しい文学のために』を読んでいると、ふいに大江さんがトルストイの「戦争と平和」について語り始めた。そこには、ピエールとナターシャが結婚するという、ぼくがまだ知らない大事件がさらっと書いてあって、慌ててぺージを閉じた。間に合わなかった。盛大なネタバレをくらってしまった。思わず(健三郎ー!)と心の中で叫んだけど、それは大江先生のせいではなかった。アンドレイ公爵が死んだ時、うすうす気づいてはいたけどね。ぼくのこのブログも、戦争と平和をまだ読んでいない人にとっては、ネタバレを含みますのでご容赦ください。


2025年10月9日

すでに読んだ2巻を何気なく手にとって、ぱらぱらっとぺージをめくったら、ロストフ一家が狩りをする場面に当たりました。本筋とはあまり関係のない話で、全体からすると重要度は低いけど、心に残る場面です。この時だけ登場するニコライの叔父が、いかにも自然の中で暮らす高潔な自由人で、話をしながら突然「天地神明!」と叫ぶ変人で、最高でした。

狩りのあと、叔父の家(猟犬が泥まみれのまま書斎に入るような粗野な家)で、採れたてのはちみつ、胡桃、りんご、きのこ、ジャム、ハム、鶏肉、をみんなで食べながら、ギターを弾いて、歌って過ごす平和な夜は、豪華絢爛で世辞にまみれた社交界との対比で、とても魅力的に映ります。やっぱり自然の暮らしっていいな。名脇役は他にもたくさんいるけど、脇役大賞はニコライの叔父で決まりです。天地神明!


2025年10月16日

フランス軍の捕虜になってしまったピエールが苦しい捕虜生活から解放された時、ぼくは30年前の自分の過酷な体験を思い出しました。

それは、アルバイト情報誌anに載っていた楽しいイラストに釣られて応募したテキヤのアルバイト経験で、大きなトラックの荷台に乗せられて、九州各地のお祭りに連れていかれ、風呂にも入れず、朝から晩までビニール人形を売り続けるという過酷な5日間から解放されたとき、ぼくはピエールと同じように自由の喜びを全身で感じました。お金のためにキツイ思いをしたはずなのに、もはやお金なんてどうでもよくなっていました。

そしてピエールがナターシャと再会して、これから2人の結婚に向けた話が描かれていくのか、と思いながらぺージをめくると、唐突に「エピローグ」という文字が現れて震えました。ここで終わらせるとは!この後にエピローグが150ページもあるから、本当の終わりはまだ先だけど、物語としての終わりは、あのナターシャの台詞ということでいいんですよね?余韻がすごすぎる・・・。


2025年10月20日

ついに読み終えました。めちゃくちゃ面白かった。堅いタイトルで損してるよなーと思っていたけど、読み終えたいま、この大長編にふさわしいタイトルは「戦争と平和」以外考えられない、という気持ちです。

登場人物はなんと総勢559人!ワンピースも真っ青です。しかも、大抵の作品は一人ひとりの性格が決まっていて、ジャイアンはジャイアン的な言動や行動しかしないけど、トルストイが生み出すキャラクターは複雑な人間そのもので、その時の状況によって、グラグラと揺れ動きます。それが非常にリアルです。100%の善人なんていないですから。

それにしても、どうしてロシアにはトルストイやドストエフスキーのような偉大な作家が何人も出現したんだろう?と考えたのですが、それはたぶん「寒いから」と結論付けました。

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