たった一行でも心に残る文章があればいい。『歩くこと、または飼いならされずに詩的な人生を送る術』という本がそうだった。何事もうまくいかず、ボロボロの状態だった主人公が、歩いているときに突然、幸福を感じる。「自分がいま幸福なのは歩いているからだ」という一行。税込2,915円。それが一行の値段だとしたら、ちょっと(いや、かなり)高いな。
この本は、カメラマン黒川さんとの撮影の旅の途中、熊本の書店で買った。店主のセレクトが光る書店だった。その時いっしょに買った吉増剛造さんの『詩とは何か』は、ぼくの愛読書になった。この本はそこまでの位置にはいかなかった。でも、あの時あのお店で買ったという思い出がセットになっている。Amazonで買うとそうはならない。だから買い方も大事だと思う。(Amazon便利だから使ってしまうけど)
最近は暑いから、汗をかきたくないから、歩くことを避けてしまっていたけど、髪を切ったついでにたくさん歩いたら、気持ちがよかった。汗だくになったけど、頭の中がスッキリした。