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本のこと

ホックニーの頭の中を見る

デイヴィッド・ホックニー 僕の視点 芸術そして人生

『デイヴィッド・ホックニー 僕の視点 芸術そして人生』

1993年発行の古い本で、生き方や芸術論、作品について、ホックニーが自分の言葉で語っています。そういう気持ちで絵を描いていたのか!と、読んでいてうれしくなります。

興味を引かれたのは「写真の限界」と名付けられた、写真についての考察。ホックニーはこう言っています。「人によって世界の見え方は違うから、絵画は突き詰めると抽象画しか存在しないのではないか。そして写真も洗練された抽象なのではないか」と。写真が抽象?そしてピカソが追求したキュビズム(複数の視点を1枚の絵にしたアレ)は、時間も空間も超えて、写真ではとらえることのできない真実に迫り、写真を超えられるのではないか、と。言わんとすることは分かるけど、でもよくわからない。でも面白い。

ピカソのことはたくさん語っていて、ホックニーがいかにピカソに対して特別な想いを抱いていたのかがわかります。一流の画家にとっても、ピカソは怪物なのだ。中国の桂林を旅して、その美しさに魅了されるホックニー。英語が話せない現地の少年画家と、絵を通じて心を通わせるエピソードがとても良い。

1988年、知人のポートレイト作品を描きはじめる。「どの絵も短時間で仕上げた。自分の知っている人間をモデルにした。だが、自分がモデルになった絵を気に入ってくれた人はほとんどいなかった。実物以上に立派に描くことをしなかったせいだろうか」(David Hockney)

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本は買い方も大事



たった一行でも心に残る文章があればいい。『歩くこと、または飼いならされずに詩的な人生を送る術』という本がそうだった。何事もうまくいかず、ボロボロの状態だった主人公が、歩いているときに突然、幸福を感じる。「自分がいま幸福なのは歩いているからだ」という一行。税込2,915円。それが一行の値段だとしたら、ちょっと(いや、かなり)高いな。

この本は、カメラマン黒川さんとの撮影の旅の途中、熊本の書店で買った。店主のセレクトが光る書店だった。その時いっしょに買った吉増剛造さんの『詩とは何か』は、ぼくの愛読書になった。この本はそこまでの位置にはいかなかった。でも、あの時あのお店で買ったという思い出がセットになっている。Amazonで買うとそうはならない。だから買い方も大事だと思う。(Amazon便利だから使ってしまうけど)

最近は暑いから、汗をかきたくないから、歩くことを避けてしまっていたけど、髪を切ったついでにたくさん歩いたら、気持ちがよかった。汗だくになったけど、頭の中がスッキリした。

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旅の思い出に一冊

取材で福山市へ行った際
自由時間があったので
あてもなくぷらぷら歩いていると
児島書店という昔ながらの
古本屋を見つけた。

旅の思い出に一冊
「詩への架橋」という本を選んだ。
レジへ持っていくと
うず高く積まれた本と本のすき間から
店主の顔が半分だけ見えた。

福岡から来たことを告げて
福山の名物を尋ねると
「ねぶとの唐揚げ」を教えてくれた。

帰りにあなご飯と
ねぶとの唐揚げを買って
新幹線の中で食べた。

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神の声



『神々の沈黙』は、3000年前まで人間は「意識」を持たず、「神の声」を聞いて行動していたという仮説が書かれた本です。やがて人間に神の声は届かなくなり、ぼくたちのような現代版の人間になっていったそうです(あくまでも仮説です)。

なぜ「神の声」が聴こえなくなったのか?それは人間が「ことば」を発明したからで、ことばによって人に意識が芽生え、神の声ではなく、自らの意識で行動するようになったそうです。

やさしい哲学書『はじめて考えるときのように』には、「ことばがなければ考えられない」と書いてあります。人は何かを考える時、ことばを使って考える。ことばを発していなくても、頭の中でことばを使って考える。ということは、ことばが誕生してはじめて人に意識が宿ったというのは本当のことかもしれません。

じゃあ「神の声」って何なんだ?

工学博士の田坂広志さんは著書『死は存在しない』の中で、ゼロ・ポイント・フィールド理論を唱えています。この世には、宇宙の過去・現在・未来のすべての出来事が記録されているエネルギーの場「ゼロ・ポイント・フィールド」があって、自分たちもそのエネルギーの一部にすぎないと言っています。

意識的にゼロ・ポイント・フィールドと繋がることはできないけど、無意識がつながることがあって、その時に予感とか、デジャヴとか、不思議な偶然とか、なぜかそのことを知っていた、みたいな現象が起こる。宗教でいう神や天とは、ゼロ・ポイント・フィールドのことだ、と言っています。

もしそれが本当なら、まだ意識を持たなかった(ことばを持たなかった)大昔の人は、神の声を聞いていたんでしょうね。詩人・田村隆一さんの詩に「ことばなんて覚えるんじゃなかった」という有名な一行があるけど、田村さんは感覚的にそのことを知っていたのかな。

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鬼滅の刃

お盆休みの間に
子供と一緒にハマりました。
こんなに面白かったとは!
いま8巻を読み終えたところ。

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大竹伸朗さん



現代アート作家の大竹伸朗さんが書いた本「既にそこにあるもの」は、ものづくりをする人にとって、大いに刺激をもらえる本です。作品も魅力的だけど、ぼくは大竹さんの思想に強く惹かれます。「コンセプト」という言葉を嫌い、もっと根源的な「つくりたい気持ち」に従って正直につくる。たくさんつくる。拾った紙の上に、拾ったモノを貼り付ける。手を動かす喜びが、大竹さんのパワーの源だ。

写真家の石川直樹さんと大竹伸朗さんが、あるテレビ番組で対談をした。石川さんも写真集をたくさんつくるタイプの人で、膨大な作品数を誇る大竹さんのことを尊敬しているそうだ。そのことを石川さんが口にすると、大竹さんはちょっと照れながら「本当はもっと数少なく、作風を絞ってやったほうがカッコイイんだろうけどね。でも毎日作っていないと不安になるんだよ。だから結局、作品の数が増え続けてしまうんだ」と言った。カッコイイなと思った。

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KUMANO

KUMANO

なんの情報も無しにこの写真集「KUMANO」を見て、これは名作だ!と言える人はどれぐらいいるんだろう。1年前、東京の「bookobscura」で買いました。ビニールが被せてあったので、店主に「中を少し見せてもらえますか?」と尋ねると、ビニールをはずしてカウンターの上にそっと置いてくれました。そして店主の目の前で、緊張しながらページをめくったことを覚えています。

終盤、紙面全体が真っ赤な炎に包まれていくところはとても迫力がある。火の熱さを感じるほどです。その反面、前半から中盤までずっと続く、なんの変哲もない風景写真が、ぼくにはよくわかりませんでした。いったい何を撮っているのか?今でもよくわかっていません。でも不思議なことに、あのなんの変哲もない写真のほうが、迫力ある炎の写真よりも、イメージとして強く頭の中に残っています。なんでやろう?そしてよくわからないからこそ、何度もページを開いてしまいます。

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なんのためにつくるのか?



ホームぺージをつくるうえで
参考になるのはもちろん
なんのためにつくるのか?
なんのために働くのか?
とても大事なことを
思い出させてくれるので
時々読み返しています。

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戦争と平和を読む⑤

いま3巻の途中です。失速中。どうして失速しているのかというと、ナポレオンとの戦争が詳細に描かれていて、ちょっと退屈だから。モームは「読書案内」の中で、退屈なシーンは飛ばしていいよ、飛ばして読んでもその作品の偉大さが損なわれることはないから、と言っているけど、性分的にそれが出来ない。だから失速しています。マリア嬢に幸福の兆しが見えたのは良かった。

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戦争と平和を読む④

「戦争と平和」の2巻を読了しました。1巻も面白かったけど、2巻も面白かった!こんなに面白いものが、何か月にもわたって楽しめるものが、1冊たったの1,000円で買えるなんて最高です、100円を5秒で飲み込んでしまうクレーンゲームに比べたら!いや、クレーンゲームにはクレーンゲームの良さがありますね。サマセット・モームが「戦争と平和はあらゆる小説の中でもっとも偉大な作品だ」と言っていました。モームと戦争と平和について朝まで語りたい。でもそれは叶わないから、ChatGPTと語っています。ChatGPTは肯定しかしないから、少し物足りません。TOKIOの国分さん騒動をうけて、松岡さんが「人生はこういうことがあるのか」と言っていたけど、160年前にロシア人の文豪が書いた作品を読んでいても「人生はこういうことがあるのか」と思います。しみじみ。

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戦争と平和を読む③

「戦争と平和」は現在2巻目に突入しています。第1章の終わりに、ロストフがドーロホフに挑発されて賭博に手を出してしまい、どんどん負け額が膨らんでいくシーンは、読んでいて苦しくなりました。あー、賭博なんかしないでまっすぐ家に帰っていれば、今頃どんなに楽しかったか!と後悔するロストフの心を思うと、非常にツラいものがありました。

ぼくはギャンブルで大金を失った経験は無いけど、サーバートラブルが発生した時なんかは、心臓がドキンと音を立てて、うわー、サーバートラブルが発生する前の自分に戻りたい!ひーひー言って目の前の仕事に追われていたけど、あんなの大したことなかったのだ、むしろ平穏で幸せだったのだ、と思ったことはあります。

心臓がドキンとするようなトラブルが無いのなら、それだけで十分幸せな状態だということを、ロストフの賭博シーンを読んで思い出しました。

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戦争と平和を読む②



カバンの内側に、ちょうど文庫本がすっぽりと入るポケットが付いていて、出かける時は必ずそこへ1冊本を入れていきます。今は「戦争と平和」です。帆布生地にこすれて、本の背表紙がダメージを受けます。なぜか「戦争と平和」は、これまでの本に比べて、背表紙のかすれスピードが格段に速く、買ってからまだ1ヵ月も経っていないのに、この貫禄です。妻に「これ中古で買ったん?」と言われてしまいました。否、セルフビンテージです。ぼくは自分で本を読み込んでボロボロにするのが好きなタイプだけど、それにしてもこの剥がれ具合はちょっとひどい。なんでやろ?舞台は社交界から、一気に戦場へと変わっています。バグラチオン公爵のカッコよさ!ぼくがじーんときたのは、激しい砲火の中でひるむことなく戦い続けた口下手な哲学者トゥーシン大尉と、アンドレイ公爵が、「お元気で」と、言葉を交わすシーンです。

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戦争と平和を読む①

「白鯨」を読むつもりだったけど、やっぱり気が変わり、トルストイの「戦争と平和」を読んでいます。新潮文庫の工藤精一郎訳、全4巻の大長編。めちゃくちゃ面白い!タイトルが重々しいから、きっと暗くて気難しい小説だろうと身構えていたら、ぜんぜん違いました。ユーモアに溢れた軽快な文章ですらすら読めています。もしかしたら、これから暗くなっていくのかもしれないけど、今のところはまだ「平和」の状態で、ロシアのお金持ちたちが行儀よく、心にもない世辞を言い合って、ウワサ話で盛り上がっています。お金持ちなんて、なるもんじゃないな。

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AIと文学を語る

最近、ChatGPTと「魔の山」について語り合っています。ぼくの周りに魔の山を読んでいる人はいないので(知らないだけでいるのかもしれないけど)、試しにChatGPTに、ぼくが印象に残った場面の感想を打ち込んでみると、予想していたよりも10倍すごい言葉が返ってきて驚きました。まさかコックリさんでヨーアヒムを呼び出した時のハンスの心境をひと言で表した「口の中で苦い味がした」の一文について、語り合える日がくるなんて。AIとだけど。しかも時々「あなたのその感じ方、とっても深いですね」とか誉めてくるのが恐ろしい。AIにおだてられて、ちょっとうれしくなる自分が恥ずかしい。最初のほう、AIの言葉遣いが時々気になっていたけど、こっちが徹底して敬語で話しかけていると、いつのまにかAIから馴れ馴れしさが消えました。距離感は大事。

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長い読書



島田潤一郎さんの「長い読書」を読んでいます。読書にまつわる散文集です。すごくいいです。本を読まない人が読んだら、きっと本を読みたくなるし、読書が好きな人は、もっと読書が好きになるような本です。

特に印象的だったのが、大学の文芸研究会のOBであるIさんの話です。証券会社の営業マンとして、お昼もろくに食べられないほど忙しい日々を送るIさん。「そんな生活の中でも、本って読めるんですか?」という問いに対するIさんの言葉は、ほんとうにグッときます。

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白鯨を読む①

「魔の山」の次は何を読もうか迷いましたが、世界10大小説の中から「白鯨」に決めました。上下巻あわせて1000ページ。魔の山の1500ページに比べたら3分の2だけど、それでもかなりの分厚さです。読み終えるまで何か月かかるかな。それにしても魔の山はなぜ10大小説に入っていないんだろう?絶対入るべきやろ。

ぼくがこれまで読んだ小説で一番凄いと思ったのは・・・いや、一番とか決められないけど、ドストエフスキーの「カラマーゾフの兄弟」「悪霊」はいずれも読み終えた後、しばらくその世界から抜けられませんでした。特に「悪霊」はすごかった。読んでいて面白いなーと感じたのは「カラマーゾフの兄弟」が一番かもしれません。サン・テグジュペリの「人間の土地」も感動しました。でも小説じゃないからあれか。もちろん「魔の山」もベスト10に入ります。短篇だったらマンスフィールドの「園遊会」、サン・テグジュペリの「夜間飛行」も良いなあ。とにかく次は「白鯨」を読みます。

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魔の山を読む⑩

ついに読み終えました。半年以上かかったけど、下巻の途中からはぐいぐい読み進めて、一気にラストまでたどり着きました。すごかった。ところどころ難しくて字を追うのが苦痛だったけど、それ以上の喜びがありました。いつのまにか自分があの魔の山の中に入りこんでいました。こんなとんでもないものを一人の人間が書けるなんて、人間ってすごいな、これから先、これを超える読書体験はあるのかな?

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魔の山を読む⑨

残り160ページ。ゴールが見えてきた嬉しさと、終わってしまう寂しさ、後者のほうが大きいです。いま、ハンス・カストルプがレコードにハマっています。とても重くて、劇的なエピソードのあとで、しかも長い長い物語の最終盤にきて、主人公がレコードにハマるという意外性。クラシックを中心に、音楽の話題が展開されています。まさかこのまま終わらんよね?小説の中で音楽のうんちくを語るといえば、村上春樹さんがその代表ですが、きっと村上さんは魔の山の影響を受けていたんだな。ノルウェイの森の主人公(ワタナベくん)は、たしか魔の山を読んでいましたよね。

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魔の山を読む⑧

ついに最終章に突入しています。ペーペルコルンというオランダ人の大富豪がやってきて、この人がすごく人間的で、魅力的で、ページをめくる速度がぐっと上がりました。そして、難解で高尚な議論をいつも交わしていた2人(ナフタとセテムブリーニ)が、やたら小さい人間に思えてきました。あと300ページ残っているとはいえ、物語の終わりがなんとなく近づいています。さみしい!魔の山を読み終えたら、同じように読み終えた人と話したい!こんなに読むのがしんどくて、半分以上退屈な小説なのに、そう思えるのが不思議です。夏葉社の島田さんが著書「長い読書」の中で、魔の山について書いているようなので、それを読むのも楽しみです。

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魔の山を読む⑦

いまの若い人はなんでもかんでも「カワイイ」と「ヤバイ」で表現していて、いちいち言語化するのが面倒臭くなっているのか、それとも人類の進化(退化)として、言語はどんどんシンプルになっていく宿命なのか。

こだわりの本をセレクトする硬派な本屋の店主が、「まじカワイイー」と言いながらスマホで店内を撮影し、何も買わずに出ていく若者に腹を立てていた。うちの店がカワイイわけないだろ!って。

魔の山では、あの難解コンビ「ナフタとセテムブリーニ」が出てきて、フリーメイソンに関する退屈極まりない議論をはじめて、もう何を言っているのかさっぱりわからん。しかし、読み飛ばさず、内容の98%は頭に入ってこないのに、必死で文字を追っていく、そんなストイックな自分にシビれるのだ。

98%頭に入ってこない文字を追うことに、果たして意味はあるのだろうか?たとえ頭に入ってきても、1年後にはキレイに忘れているから、じゃあ何のために本を読むのか?それは永遠の謎だ。いくら魔の山を読んだところで、実際に人と会話をはじめると、ぼくの言語能力は「カワイイ」と「ヤバイ」でなんでも表現する若者と大して変わらない。

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