なんの情報も無しにこの写真集「KUMANO」を見て、これは名作だ!と言える人はどれぐらいいるんだろう。1年前、東京の「bookobscura」で買いました。ビニールが被せてあったので、店主に「中を少し見せてもらえますか?」と尋ねると、ビニールをはずしてカウンターの上にそっと置いてくれました。そして店主の目の前で、緊張しながらページをめくったことを覚えています。
終盤、紙面全体が真っ赤な炎に包まれていくところはとても迫力がある。火の熱さを感じるほどです。その反面、前半から中盤までずっと続く、なんの変哲もない風景写真が、ぼくにはよくわかりませんでした。いったい何を撮っているのか?今でもよくわかっていません。でも不思議なことに、あのなんの変哲もない写真のほうが、迫力ある炎の写真よりも、イメージとして強く頭の中に残っています。なんでやろう?そしてよくわからないからこそ、何度もページを開いてしまいます。