小さなデザイン事務所のまじめなホームページ制作

本のこと

すごい話

大江健三郎さんがノーベル文学賞を獲った時、
ミーハーなぼくは「死者の奢り・飼育」の
文庫本を買って読んでみるも、
小僧だった当時のぼくには難しくて、
あの暗いイメージだけが残りました。

それから大人になって
「新しい人の方へ」という本を読んで、
大江さんという人はとても
魅力的な人だなと思いました。

そこにはコラムのようなかたちで、
本はゆっくりと読むものだとか、
ウソをつかない人になるための方法だとか、
大江さんの生き方や考え方が
やさしい文章で書かれていました。

なかなか手を出せずにいた
カラマーゾフの兄弟を「読むぞ!」
と決意させてくれたのも、
この本のおかげです。

先日ツイッターを眺めていると、
大江さんに関するツイートが
流れてきました。

伊集院光さんのラジオに
大江さんが出演した時のことを、
リスナーが記憶を頼りに綴った
ブログ記事が紹介されていて、
それがすごい話だったので
リンクを貼っておきます。

https://plaza.rakuten.co.jp/norimasa1718/diary/200803030002/

ちょっと長いですけど、
ぜひ最後まで読んでほしいです。

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ニワトリと卵と、息子の思春期

ニワトリと卵と息子の思春期

ゲームを買ってとねだる小6の長男、
その要求を拒む写真家の母、
ある日突然、長男が
「ゲームの代わりにニワトリ飼わせて」
と言ってはじまる親子と鶏の物語。

長男の目的は、
ニワトリの卵を売って
お小遣いを稼ぐこと。
そして最後は絞めて
食べるところまで計画する。
小6の少年が!すごすぎる!

果たしてその結末は・・・

親子のこと、生死のこと、お金のこと、
人生のぜんぶが詰まっていて、
めちゃくちゃ面白かった。
ときどき挟まれる写真も素敵です。

思春期の子供って、
こんなに大変で、
でも眩しいものなのか。
自分の子供にもいずれ
思春期が来るんだよなあ。
(うまく対応できるかな)

ニワトリがはじめて卵を産んだ日、
読んでる自分もぽろっと
涙が出そうになりました。

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コム・デ・ギャルソン工場

村上春樹さんの本はほとんど
持っているつもりだったけど、
ふらっと立ち寄ったMUJIBOOKSで
目に留まった「日出る国の工場」
そういえば持ってないかも、
いや持ってるかな?ぱらぱらぱら・・・
やっぱり持ってないや、
例によって安西水丸さんの挿絵が付いてます。

ぼくは水丸さんの仕事の中で
「村上朝日堂はいかにして鍛えられたか」
の挿絵がいちばん好きです。
フォルムも線の太さも抜群にいいです。
日出る国の工場の挿絵もなかなか素敵でした。

村上さんによる工場見学記も面白くて、
コムデギャルソンの工場を取材する回は、
これだけでこの本を買った価値がある。

村上さんが川久保玲さんのことを
語っているのもとても興味深く、
あのギャルソンの服を
町の職人さんが自宅の2階で
奥さんと共に縫製している
という事実にはちょっと興奮します。

もちろんそこだけじゃなくて
他にも大小いろいろな工場に発注しているし、
この本が書かれたのは1986年だから、
今はもうそんな素敵な体制では
ないのかもしれないけど。

ちなみにぼくは
コムデギャルソンの服を着たことは
一度もありません。

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螢・納屋を焼く・その他の短編

もう随分前に買って、
自分といっしょに何度か引っ越しも経験して、
紙の色も変色したボロボロの文庫本って
良いですよね。

そういう本って不思議と
紙から甘くていい匂いがします。
中古で買った本の匂いは好きじゃないけど、
自分で長い時間をかけて
育てた本の匂いは好きです。

村上春樹さんの「螢・納屋を焼く・その他の短編」
を先日ひさしぶりに読みました。
これもかなりボロボロです。


納屋を焼く


収録されている短篇はぜんぶ良くて、
中でも「めくらやなぎと眠る女」が好きです。

仕事をやめたばかりの25歳の主人公が、
耳の聞こえづらい従弟の中学生と
いっしょにバスに乗って病院へ行く、
たったそれだけの話ですが、
バスを待つふたりの会話と
その情景が詩的でとても良いんです。

ぼくは「パターソン」のように、
何も起きない静かな映画が好きで、
この短篇はまさに何も起きないスロー小説。

従弟の中学生がいいんですよ。
しきりに「いま何時?」って聞いたりして。
バスに乗る前、渡された小銭を
大事そうにぎゅっと握る場面、
良いんだよー。

自分の子供がいま4歳で、
もしかしたら今がいちばん
可愛い時期かなと考えていたら
「中学生の息子がいる人が、
今もずっと可愛いって言ってたよ」
と妻から聞いて、なんだそうなのかと
安心したことを思い出しました。

この短篇は村上さんが3
4歳の時に書いた初期の作品です。
安西水丸さんが描いた
表紙の絵と題字も良いですね。

ちなみにこの題字、
電話で本のタイトルを聞かされた水丸さんが、
その場でささっとメモに書いたものだそうです。
その後たくさん清書したけど、
結局メモ書きのこれが一番良かったんだって。

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悪霊

悪霊


ついに悪霊を読み終えました。
カラマーゾフ以上に読みづらく、
上巻はとにかく苦痛でした。

いったい何の話を読まされているのか
よくわからないまま、
修行のような気持ちで上巻を読み終え、
下巻の中盤あたりで
やっと何かが見えてきて、
終盤はただただ圧倒されました。

すべてがわかった後もう一度読み返すと、
あんなに退屈だった上巻もすごく面白い。
すごいぜ悪霊。
ぼくはカラマーゾフよりも、
悪霊のほうが好きかもしれない。

ネットで悪霊ファンの声を読み漁ると、
だいたいみんな読むたびに面白くなる
と言っています。本当にその通りです。
映画でもそういうのありますね。
初見は??だけど、中毒性の高いやつ。
例えばブレードランナーとか、3-4X10月とか。

シャートフ、キリーロフ、
ステパン先生、ワルワーラ婦人、
登場人物みんなが魅力的で、
ドストエフスキーはキャラひとりひとりに
ちゃんと「心」を持たせている気がします。

そのせいで読みづらく、
難しいんじゃないかな。
だって人の心が一番わからないから。

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東京ヒゴロの主人公がちょっと自分に似ている?

東京ヒゴロ


松本大洋氏の漫画を
こよなく愛するカメラマン黒川さんが
「東京ヒゴロいいですよ、
主人公が原田さんに似てるんです」
と言うので、気になって購入しました。

うん、いい。
絵の魅力は言わずもがな。
話も地味でとってもよかったです。

漫画を描くことをやめた
嵐山先生を訪ねた翌朝、
朝日がさしこむバス停で、
まっすぐ左手をあげる塩澤さんと
バスを描いたひとコマが、
とても好きでした。
これもう映画やん。

まだ1巻が出たばかりで、
これからどう展開するのか。
たのしみがまたひとつ増えました。

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深瀬昌久伝

深瀬


写真集「鴉」を見ていくうちに、
写真家の深瀬昌久さんが
どんな人間だったかを知りたくなり、
昨年の12月に出版された
「深瀬昌久伝」を買って読みました。

深瀬さんの助手を長年つとめた瀬戸正人さんが、
当時のことを振り返りながら書いているんですが、
純粋に読み物としてとても面白かったです。

やっぱりというか、写真から感じるとおり、
深瀬さんは非常に変わった人だったみたいですが、
この本の中での深瀬さんは
いつも酔っぱらっているので、
その変人ぶりが本来の性質なのか、
それともアルコールのせいなのか、
それはちょっとわかりません。

日常は写真家仲間たちに囲まれていて、
写真集から感じられるような孤独は
(表向きには)なさそうです。

というか「自身の孤独を写しだした」
なんていう評論はなんか安易で嫌だし、
だいたいみんな孤独でしょ。

とても不思議なのが、
当時の深瀬さんはたいした仕事もなく
いつも共同事務所でごろごろして、
夜はお酒を飲みに行っているんですが、
飲みに行くお金はどうしてたんだろう?

写真だってお金かかるのに、
フィルム代はどうしてたんだろう?
謎です。

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カラマーゾフの兄弟

カラマーゾフの兄弟


カラマーゾフの兄弟、上中下3巻、約2000ページもある、あのドストエフスキーの大作をついに読み終えました。

「世の中には二種類の人間がいる。カラマーゾフの兄弟を読破したことのある人と、読破したことのない人だ」と言ったのは村上春樹さんですが、ぼくは読破したことのある人の仲間入りをしたわけです。てってれー。

結論からいうと本当に面白くて、下巻の最後のほうを読んでいるとき、ああ、もうすぐ終わってしまう、という寂しさを感じながらも、ページをめくる手が止まらない。そんな感じでした。こんなに充実した読書体験は久しぶりです。

頭の中でカラマーゾフの世界が出来上がり、ロシアの風景や個性的な登場人物たちの顔が、映像として脳にしっかりと刻まれ、いまだその世界から抜け出せていません。

ぼくは長男のミーチャ(ドミートリィ)が好きでした。乱暴者でめちゃくちゃだけど、正直でウソをつかない誇り高い男。もっとミーチャのことを見続けたかったなあ。上中下じゃ足りん。

確かに難解な部分はありました。それを本当の意味で理解できたかどうかはわかりません。でもそこから何かを感じとることはできました。映画も小説も、そこが大事です。すぐにわかってしまうものなんて、すぐに役に立たなくなるんです。そういうもんです。

それにしても、次男のイワンが語るキリスト教や神についてのくだりは、人間が書いたとは思えない凄みがありました。ドストエフスキーさんも凄いけど、翻訳者の原卓也さんもすごい。

きっとまた読み返すとおもいます。そのたびに新しい発見があると思います。カラマーゾフの兄弟は、ぼくにとって特別な作品になりました。

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本、ほん、ホン

どんなに忙しくても、本は読んでいます。以前は、ひとつの本を読み終えてから、次の本にとりかかるという正統派読書スタイルでしたが、最近は同時に複数の本を読むスタイルになりました。

ちなみにいま読んでいるのは

たましいの場所(早川義雄)
カフカ短篇集(池内紀編訳)
銀の匙(中勘助)
新しい人の方へ(大江健三郎)

です。漱石の草枕、梶井基次郎の檸檬、カラマーゾフの兄弟も控えています。そう、ついにカラマーゾフを読む覚悟を決めたのです。

早川義雄さんの「たましいの場所」は、本当の気持ちが書かれていて良いなあ。SNSで書いたらきっと叩かれることも書いてあるけど、それが正直な気持ちだってわかるから、読んでいて心に響く。SNSなんて嘘だらけやもんね。

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小さなユリと

なんと・・・


小さなユリと


取材の帰りに立ち寄った蔦屋書店、特に何かを探すでもなくぼんやり詩集コーナーを見ていたら、黒田という文字がパッと目に入って、ん?黒田?薄い背表紙のちいさな文字をよーく見ると「小さなユリと」って書いてある。

ネット上から姿を消したと先日ブログに書いたばかりの本に、まさかこんなに早く出会えるとは。とてもうれしい出来事でした。

妻の入院中、3歳の娘ユリとのふたりきりの日々を綴った、黒田三郎さんの詩集。どの詩もじんわり心に染み入ります。最期を締めくくる「小さなあまりにも小さな」が、ぼくは特に好きです。

夏葉社さんの本はどれも丁寧につくられていて、紙の質感やサイズ感も手に心地よく、物質としての魅力も大きい。詩の題名だけがポツンと書かれたページをめくって詩がはじまる。ひとつひとつの詩に対する、作者に対する、敬意が感じられます。

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